糾弾と詭弁と

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少女漫画家の末次由紀氏が著書の中で、スラムダンクの絵を一部トーレスしたことが発覚して単行本が回収、絶版になった騒ぎで、編集家の竹熊健太郎氏が単行本の回収までするのはいかがなものかと、ネット上での漫画家の盗用騒動について異論を述べた。

http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_9358.html

言わんことは分からんでもないですが、じゃあ末次氏のやったことに目つむっていいのかねぇという疑問も残る。僕は竹熊氏の意見は詭弁じみているようにも見えなくはない。著作権侵害が「親告罪」であり、井上雄彦氏が法的手段に出ない限り侵害行為には当たらないとは言うが、親告罪なら何してもいいという論法には同意は出来ない。第一、同じ講談社内で連載持っているのだから、双方の編集者が折衝して井上氏に訴訟だけは起こさないよう、説得なりしているはずだろうからね。

そもそも、理由は違えど今までだって市場に出た本が回収・絶版にされるということはいくらでもあったはず。キャンディキャンディは作者と作画家の紛争のせいで何十年もの間、絶版状態にある。逆を言えば、末次氏の著書に対する講談社の対応に「絶版は酷い」とそこまで騒がなくてもいいと思いますね。

例えば、どっかの団体の利権を追及した漫画や著書がその団体の圧力で回収・絶版になったというのであれば充分に騒ぐだけの価値もあるが、今回は漫画のコマ盗用という、理由としてはかなりトホホなものです。回収は行き過ぎだ、と却って火に油を注ぐとただでさえ厳しい追及で傷心の末次氏に追い討ちをかけるだけだと思いますが。

一方で小説家の米田淳一氏がWebサイト上から文章を盗用して著書を出版していたという騒動もあったりもしたけど、読者からの追及に対して米田氏は「これは偶然です。僕もどうしてここまで似ているのか、驚愕しています」とすっとぼけた経緯もある。

http://www.wikihouse.com/pripla/
http://d.hatena.ne.jp/jyl2142/

末次氏も「米田氏ぐらいの図太さ」があればいいと言うことなんでしょうかね。もっとも米田氏はこの騒動以降、事実上、業界から干されてしまいましたが。講談社側が例え回収・絶版処分にせずに井上サイドと穏便に事を済ませたとしても、末次氏の漫画家としての道はこの時点で断たれるのではないでしょうか。