北朝鮮とのケンカのしかた「宣戦布告」なき対日戦争

鉄腕アトムエイトマンの脚本家でもあり、SF作家でもあり、また戦後日本における最初期の親韓派だった豊田有恒氏の著書。原型の「いい加減にしろ北朝鮮」の改訂版で2003年に発行。遅ればせながらこの本を読んでました。

しかし豊田氏が30年前に「韓国の挑戦」を発表した時、氏は北朝鮮を地上の楽園であると信じて疑わない自称文化人から散々バッシングを受けたことや、ツテを辿って北朝鮮渡航をしようとしたら当局から入国を拒否されたことなどが書かれている。約30年前の日本の文化人では北朝鮮こそが地上の楽園、朝鮮半島で唯一、成功した政府とみなされて韓国は軍事独裁政権と蔑まされていた時代だった。時代は変わったものである。

しかし当時の豊田氏へのバッシングといい、形こそ変えても今でも一部の自称文化人とやらが北朝鮮に対して強行政策を唱える人たちを右翼呼ばわりする現在とあまり状況は変わってないんだなと思いましたな。

この本で重要な点は北朝鮮は日本に「低緊張戦争」を仕掛けていることである。戦争はもうすでに始まっているという認識である。戦争といってもミサイルや戦車が飛び出す正規戦闘でも国家間の総力戦でもない。経済や政治、マスコミに浸透して北鮮シンパを作り出してじわじわと日本へ打撃を加える。これはスイスの「民間防衛」を読んだ方がより理解できる内容だと思うが、パチンコマネーに始まって日本人拉致や覚せい剤流入などの朝鮮総連傘下の工作機関の暗躍などを見れば、戦争というものが必ずしも兵器が飛び交うだけのものではないと認識を改めざる得ない。
どうしても僕の世代は、あの「湾岸戦争」でのテレビゲーム感覚の戦争、ハイテクを駆使した戦争をイメージしてしまうきらいがある。だが、それだけが戦争ではない。

しかも、日本は憲法の縛りがあるので実際に本土が攻撃されるまで反撃は出来ない。北朝鮮製の覚せい剤が蔓延したり、マスコミ各局にシンパが浸透して北朝鮮に有利な報道をしたりしてもそれを本土を攻撃されたとする根拠には出来ない(前者はあくまで警察の領分であり、後者についてはスパイを取り締まる法律がそもそもない)。
しかし戦争はすでにはじまっている。ならばそのための法整備をするべきなのだが、これがまた憲法改正有事法制などの問題を持つためになかなか進まないのが現状である。憲法改正有事法制・日本の諜報機関設立と聞くと脊髄反射的に戦争をする国になるから反対、かつての特高の復活じゃないかという人や、自分の住む街を「無防備宣言」するだのという人たちが出てきてしまうわけだ。
もっとも最近になってようやく、日本独自で経済制裁を加えるという判断を下せるようになって、安倍政権では憲法改正も取り沙汰されてくるようにはなったが……。

豊田氏は韓国やアメリカといった友邦と協調しつつも、通常とは違う形で戦争を仕掛けられている以上はこちらも法整備を整えて低緊張戦争に備えるべきであると述べている。経済面では経済制裁、諜報面ではスパイ防止法や情報機関設立などの法整備、軍事面ではまずは憲法改正などがこれにあたるのかも知れない。

北朝鮮に対して、どうして日本は打って出ることが出来ないのか? 打って出るにはどうすればいいのか? 疑問に思っている人にとって豊田氏のこの本にはその答えが載っている。